◆ 覚え書き ◆
ハイリスク薬としての抗てんかん薬
2011年10月10日 最終更新.
※ハイリスク薬についての基本的事項は“薬学的管理について”のページ参照
てんかんの薬物療法のポイント
- 基本は単剤療法
- 体内動態を把握しやすいので投与設計が容易
- 有害反応の発現が減少
- 妊娠,腎機能低下,肝機能低下においても薬剤の選択,容量の調節が容易
併用療法の留意点
- 難治性の場合は併用療法が多い
- 異なる作用機序をもつ薬剤を選択→新規抗てんかん薬は幅広いスペクトルをもつ
- 薬物相互作用の影響が少ない組み合わせ,もしくは影響を考慮した投与設計→フェノバール,アレビアチン,テグレトールによるCYP(シトクロムP450),グルクロン酸抱合の誘導
- CYPの誘導は目安として,投与開始1〜3日に行われ,投与開始5〜7日で終了し,投与中止1週間後にもとの活性に戻る
抗てんかん薬の薬物動態
- 多くは肝代謝型
- 半減期は薬剤によりまちまち→定常状態に達する時間(半減期のおよそ5倍)もまちまち→効果の発現にも差がある
- 例(括弧内は半減期,単位:時間)
- 肝代謝型:デパケン(9〜18),セレニカ(9〜18),テグレトール(30〜35),フェノバール(96〜120),アレビアチン(12〜36),マイスタン(18),リボトリール(27),ザロンチン(18〜72),エクセグラン(50〜70),ラミクタール(15〜30)
- 腎排泄型:トピナ(20〜30),ガバペン(5〜7),イーケプラ(5〜11)
抗てんかん薬と食事・医薬品による影響
- セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート):CYP1A2,3A4,P糖タンパク質の誘導
- イチョウ葉エキス:CYP2C9,2C19の誘導
- 経腸栄養剤:アレビアチンの消化管吸収低下
- 葉酸:てんかん発作の誘発
- 経口避妊薬(ピル):グルクロン酸抱合誘導,CYP誘導薬でピルの効果減弱
- グレープフルーツ,スターフルーツ:小腸のCYP3Aの阻害(テグレトールの作用増強など).グレープフルーツは2,3日,スターフルーツは1日程度持続する
抗てんかん薬の特徴
抗てんかん薬の妊婦への影響
- 催奇形性の発生率:通常妊娠2〜4.8%→抗てんかん薬服用11%に上昇
- 妊娠した際には,薬服用の有益性が薬服用しない危険性を上回る場合に留め,常用量より少ない量で
- 第2世代抗てんかん薬の方が催奇形性発生のリスクは少ない
- 催奇形性発生は葉酸の欠乏と言われるが,摂りすぎてもてんかん発作を誘発するため注意すること.1日400〜600μg程度になるよう補う
抗てんかん薬の副作用
- 共通する副作用:眠気,肝機能障害(服用60日程度),薬疹,血小板減少(服用数ヶ月),再生不良性貧血(初期〜1年),体重変動
- 体重増加のある薬剤:テグレトール,ガバペン,デパケン
- 体重減少のある薬剤:トピナ,エクセグラン
- 薬剤性歯内増殖(服用2,3ヶ月で好発,小児,成人どちらでも起こり得る):アレビアチン,フェノバール→プラークコントロール(歯科との連携)も必要
- 薬疹(服用8週間以内で好発):スティーブン・ジョンソン症候群(SJS,全身の10%未満の水痘やびらん),中毒性表皮壊死症(TEN,全身の10%以上の水痘やびらん)
- 薬剤性過敏症症候群(DIHS):薬剤中止後2週間も発現しやすいので注意する.免疫機能の低下がみられる
- SJS,TEN,DIHSのみられた患者は皮膚科受診を勧奨する
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